
夫婦愛についての非日常を描いたブラック・コメディ『カイマック/Kaymak(原題)』
時間軸が交錯する複雑な構成で民族間対立を描いた伝説的傑作『ビフォア・ザ・レイン』(1994年)で初監督作にして、ヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞したマケドニア出身の名匠ミルチョ・マンチェフスキーが問う二組のカップルのアンモラルな現代の愛の形

Story:
北マケドニア、スコピエの集合住宅。
エヴァ(カムカ・トチノフスキ)とメトディ(フィリップ・トライコビッチ)のお金持ちの成功者カップルは子供が出来ることを願っていたが、エヴァは妊娠することに恐怖を抱いていた。
一方、中年カップルの妻ダンシェ(シモーナ・スピロヴスカ)と夫カランバ(アレクサンデル・ミキッチ)は、社会から取り残されたと感じている貧窮世帯である。
カランバは毎日、ご当地名産のスイーツ、ソフト・クリーム・チーズのカイマックを土産に家に持ち帰るのだが、それは不倫相手がチーズ屋だからだった。
それまで全く夫を疑うことのなかったダンシェだったが、自分たちの寝室を浮気に使われていたことから夫の不貞に気づくのだった。
Behind The Inside:
現代の愛の形の可能性を描いたミルチョ・マンチェフスキー
監督のミルチョ・マンチェフスキーは問いかける。
現代のあまりにも芳醇な生活、可能性を掘り出そうとしたらいくらでも出てきそうな今、社会、家族、個人にとって、何が正解で何が間違っているのか?
またノーマルな生活とは一体、何なのか?
未来のための進化と古くからある風習等、様々なことを鑑みて、今の時代を生きる大人のための偽善的なラヴ・ストーリーを作ってみたかったと言う。
Must Point:
長編デビュー作『ビフォア・ザ・レイン』が映画史を飾る不朽の名作
第51回ヴェネチア国際映画祭で初長編監督作にして、見事、金獅子賞を受賞した1990年代に製作された世界の映画の中で重要な一本とされているデビュー作『ビフォア・ザ・レイン』。
監督のミルチョ・マンチェフスキーはマケドニア出身でニューヨークで映像作家として第一線で活動してきた。
その映像作家としての技術とセンスで民族間問題を時間軸と空間を巧みに操り描き、28年後の今もその作品世界の魅力は色あせることはない。
ニューヨーク・タイムズ紙が選ぶ「永久保存版1000本のベスト映画」の1本にも収蔵されている映画史を彩る不朽の名作。
多作の監督ではないので、最新作が東京国際映画祭で観ることが叶うのは、眼福と言ってよい。
Awards:
- 東京国際映画祭2022:コンペティション部門正式出品作
『カイマック/Kaymak(原題)』(2022年・北マケドニア、デンマーク、オランダ、クロアチア・1時間46分)
監督:
ミルチョ・マンチェフスキー
出演:
サラ・クリモスカ、カムカ・トチノフスキ、フィリップ・トライコビッチ、アレクサンデル・ミキッチ、ピーター・マーサヴスキー 他
© Banana Film, Meta Film, N279 Entertainment, Jaako dobra produkcija, all rights reserved, 2022
2022年 10月26日、29日、11月1日 東京国際映画祭2022 にて 公開!!
【カイマック】|第35回東京国際映画祭(2022)
『ビフォア・ザ・レイン』(94)でヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞したマンチェフスキの新作。北マケドニアの首都スコピエの集合住宅を舞台とする群像コメディ。題名はトルコやバルカン半島で一般的な菓子の名前。