ロマンスの中にある意識の曖昧さが善にも悪にも成り得る恋愛人生譚『わたしは最悪。』
本作はラース・フォン・トリアー監督の親戚であるヨアキム・トリアー監督の”オスロ三部作”の締めくくりの作品。無事や安泰などは一切考えず、勝手気ままに自分の愛と人生に邁進する一人の女性の不幸せを軽妙なタッチで描いてゆく、今までになかった斬新なロマンティック・ダーク・コメディ
Story:
じきに30歳になるジュリィ(レナーテ・ラインスヴェ)は優秀な大学生だったがなぜか、人生のキャリアや目標を転々とし、彼女の努力は何一つ実ることはなかった。そして、恋愛生活もハチャメチャ。
交際中の年上のグラフィック・ノベル作家アクセル(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)はジュリィと落ち着きたいと考えるが、ジュリィの気持ちは離れてゆく。
そしてとある晩、パーティで出会った魅力的な既婚男性エルヴィン(ハーバート・ノードラム)と急接近してゆく。
アクセルとの関係はポイッと投げ捨て、新しい交際へと飛び込んでゆくジュリィ。
新しい環境に身を置けば、より希望に満ちた新しい自分に出会える・・・
だが、今まで彼女が他人に対して行ってきたこと、自分の身に降りかかってきたこととはどんな意味を持つのだろうか・・・。
周囲の者を巻き込みながら自己愛を貫き通すジュリィという女性の4年間に渡る波乱に満ちた愛と人生の物語。
Behind The Inside:
主演のレナーテ・ラインスヴェは俳優を引退して大工になろうとしていた⁉
本作の主役ジュリィの名演を評価され見事、第74回カンヌ国際映画祭・主演女優賞を受賞したレナーテ・ラインスヴェ。彼女はヨアキム・トリアー監督のオスロ三部作の1本である『オスロ、8月31日』(2011年)で一言だけ台詞がある端役を演じていた。
だが近年では、俳優業に見切りをつけて、木工に情熱を見出し、本格的に大工になろうと自宅をセルフ・リノベしていたという。
トリア―監督からの出演要請で再び女優業へカムバックし、世界的な賞を受賞したことで、彼女の人生もまた大きく変化した。
Must Point:
オバマ元大統領2021年のお気に入り映画14本に選出
毎年恒例となっているバラク・オバマ元アメリカ合衆国大統領が選ぶお気に入り映画14本の中の栄えある一本に選ばれている。
Awards:
- 第94回アカデミー賞:国際長編映画賞(ノルウェイ代表)、脚本賞(ノミネート)
- 第74回カンヌ国際映画祭:主演女優賞・レナーテ・ラインスヴェ
- ニューヨーク映画批評家協会賞:外国語作品賞
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー:トップ5外国語映画選出
- ボストン・オンライン映画批評家協会賞:最優秀外国語映画賞
- シカゴ国際映画祭:撮影賞・キャスパー・トゥクセン
- セントラル・フロリダ批評家協会:主演女優賞・レナーテ・ラインスヴェ
- 国際映画撮影映画祭マナキ・ブラザース:銀のカメラ300賞・キャスパー・トゥクセン
- モンクレア映画祭:商業劇映画賞・ヨアキム・トリアー
- ナショナル映画批評家協会賞:助演男優賞・アンデルシュ・ダニエルセン・リー
- パリック映画祭:国際批評家連盟賞・ヨアキム・トリアー、金の塔賞・ヨアキム・トリアー
- ポートランド批評家協会賞:非英語圏作品賞
- セヴィーリャ・ヨーロッパ映画祭:観客賞・ヨアキム・トリアー
- バリャドリッド国際映画祭:国際批評家連盟賞・ヨアキム・トリアー、ゴールデン・ブロゴス賞・ヨアキム・トリアー、青年審査員賞・ヨアキム・トリアー
『わたしは最悪。/The Worst Person in the World(原題)』(2021年・ノルウェー・フランス・スウェーデン・デンマーク・2時間7分)
監督:
ヨアキム・トリアー
出演:
レナーテ・ラインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバート・ノードラム、マリア・グラツィア・ディ・メオ、ハンス・オラフ・ブレンナー、ミア・マクゴヴァーン・ザァイ二ィ 他
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