台湾Z世代が奏でる愛の惨劇『青春弑恋』
マレーシア出身台湾在住の新鋭監督ホー・ウィディンが描き出すZ世代のための台北夜想曲。リアルとヴァーチャルが錯綜する台北市で暮らす若者たちのチグハグな愛と欲望の形の末路とは・・・。
Story:
オタクの大学生ミンリャン(リン・ボーホン)は、大学にも行かずにエロティックなライブ配信を行うモニカ(アニー・チェン)に一方的に恋している。
好奇心旺盛な女子高生キキ(ヤオ・アイニン)は、コスプレイヤーに扮してミンリャンを振り向かせたい。
長い航海から帰国した料理人のシャオジャン(リン・ジェーシー)は、物静かなカフェ店員のユーファン(ムーン・リー)のことが好きだ。
ユーファンは心の癒しを求めて舞台演劇に夢中になる中、新人女優のモニカと親しくなっていく。
モニカに夢中のミンリャンは、徐々に常軌を逸した行動を取り始める。
交わることのなかったそれぞれの愛と欲望が絡み合い悲劇的な結末へと突き進む。
Behind The Inside:
2年前の東京国際映画祭でお披露目上映された作品がようやく公開
本作は一昨年開催の第34回東京国際映画祭・ワールド・フォーカス部門にて上映された。
その時のタイトルは、英題の『テロライザーズ/Terrorizers』。
とても印象に残り、上映後に作品紹介しようとしたが、紹介本数の関係で残念ながらできなかった作品である。
説明が省かれた群像劇だが、徐々にそれぞれが繋がれてゆくストーリー展開、またムーン・リー他、現代台北の若者をイメージさせるキャスト陣に魅せられ、時折、写真のような美しい切り取りを見せるフランス人撮影監督のジャン・ルイ・ヴィアラールの撮影に息を呑んだ。
監督のホー・ウィディンは、2007年に59歳で他界したエドワード・ヤン監督に心酔しているそうで、それ故にマレーシアから台湾へと居を移したのだという。
本作の英題『Terrorizers』は、ヤンの初期の傑作『恐怖分子/The Terrorizers(原題)』(1986年)へのオマージュであるかのようにタイトルを拝借している。
小生は、ヤン監督にとって遺作となってしまった『ヤンヤン 夏の想い出』(2000年)の時に単独インタビューをしたことがあるが、もともと理数系の方だったので叩き上げの映画監督というよりも、優しさの中にも大学教授のような賢者であるということが話しているとありありと伝わってきたことを記憶している。
そして、驚くほど、英語がとても流暢であった。
今は亡き台湾映画の巨匠を心の師と仰ぐホー・ウィディン監督の世界での活躍に注目していきたい。
Awards:
- フィラデルフィア映画祭:最優秀脚賞・ホー・ウィディン、ナターシャ・ソン
『青春弑恋/Terrorizers』(2021年・台湾・2時間7分)
監督:
ホー・ウィディン
出演:
リン・ボーホン、ムーン・リー、リン・ジェーシー、アニー・チェン、ヤオ・アイニン、ディン・ニン 他
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