
稀代の映像ユニット「群青いろ」が描く世界の色あい
20年前に産声をあげた高橋泉と廣末哲万のコンビからなる自主映画ユニット「群青いろ」。
以来、互いに嫉妬する時もありながらも、特に喧嘩をすることもなく二人三脚で表現したいことを映画に定着させてきた。
そして、17年ぶりの劇場公開作となる『雨降って、ジ・エンド。』(2020年)と2022年のTOKYO FILMEXで一回だけプレミア上映された『彼女はなぜ、猿を逃したか?』(2022年)も初めて劇場公開される運びとなり、この機会に二人への動画インタビューを行った。
商業映画の世界で脚本家としてのキャリアを積んできた高橋泉による脚本は「群青いろ」の変わらない剥き出しの情熱に確かな硬度を与え、廣末哲万による、時にどっちにブレるのか全く予想がつかないカミソリのような鋭さを持つ柔和な演技も健在である。
今回の2作品連続上映は、彼らのキャリアのフェイス・リフトなのか? リブートなのか? それとも2020年代以降への新たな狼煙か?
インタビューを通して紐解いてみたい。

映像ユニット「群青いろ」とは、どんな色あいなのか?
ちょうど20年前、自主制作映画の祭典「ぴあフィルム・フェスティバル」で高橋泉監督作『ある朝スウプは』、廣末哲万監督作『さよなら さようなら』の2作品がそれぞれグランプリ、準グランプリを分かち合うという異例中の異例の快挙を成し遂げた自主映画ユニット「群青いろ」の高橋泉と廣末哲万の二人。
以降、この「群青いろ」のコンビは自分たちだけが観るための自主映画を不定期に作り続けてきた。
そして劇場公開作品としては、実に17年ぶりとなる映画『雨降って、ジ・エンド』が東中野ポレポレ坐にて公開され、2022年のTOKYO FILMEXにて、ワールド・プレミア上映された映画『彼女はなぜ、猿を逃したか?』も併せて上映される。
2作品が連続上映され、今後、全国で順次上映されてゆくというタイミングで「群青いろ」の高橋泉と廣末哲万の二人に動画インタビューを行った。
20数年前、”怪しい”映画作家養成講座で邂逅した高橋と廣末。
二人はそこを飛び出し、自主映画ユニット「群青いろ」として、リアルな題材を元に製作、企画、脚本、出演、撮影、編集を二人で行い映像制作を開始する。
撮影現場では、いわゆる映画監督が陣頭指揮を執るスタイルではなく、俳優の廣末が演じながらトーンを醸し出し、脚本を執筆し監督を担当する高橋が見守りながら全体をまとめてゆくという、二人が撮影現場で描きたい世界を浸透させてゆく世界的に鑑みても非常に稀な制作スタイルを持つ。
孤高の映像ユニット「群青いろ」がどのようにして映画を作り出すのか、彼らが提示するささくれだった世界を愛してやまない人々へ彼らの志向を可視化する一助となれば幸いである。
Story:
動物園の檻を壊して猿を逃がしたことから、誹謗中傷に晒されてしまう女子高生(藤嶋花音)の真実を探り始めるルポライターの優子(新恵みどり)だったが、取材を進めるうちに彼女の精神は乱されてゆく・・・
『彼女はなぜ、猿を逃したか?/Why Did She Let the Monkeys Loose?』(2022年・日本・1時間38分)
監督:
高橋泉
出演:
新恵みどり、廣末哲万、藤嶋花音、萩原護
配給:カズモ
Story:
派遣のバイトをしながら写真家を目指す今どきの若者、日和(古川琴音)は、SNSでたまたまバズった一枚に写っていたピエロ姿の優しい物腰の男、雨森(廣末哲万)をモデルに作品撮影を進めてゆくが、彼には人には絶対に言えない秘密があったのだった・・・。
『雨降って、ジ・エンド。/Amefutte The End』(2020年・日本・1時間24分)
監督:
髙橋泉
出演:
古川琴音、廣末哲万、大下美歩、新恵みどり、若林拓也 他
配給:カズモ