ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ
先立つものは何もないが、愛すべき街と家、大切な友人がいれば、なんとかなる。ノスタルジックに染みわたる美しいストーリー
サンフランシスコで生まれ育ったジミー・フェイルズ(ジミー・フェイルズ本人の自伝的作品のため、本人が実名で演じている)は、以前暮らした祖父が建てたヴィクトリアン様式の美しい家を愛していた。
ある日、ジミーはかつての家が売りに出ていることを知り、愛着ある街で暮らしてゆくということ、愛情溢れたかつての家での暮らし、様々な気持ちが去来し、再びこの家で暮らしたい思いから家を手に入れるため奔走する。
だが、世界でも最も暮らしにお金のかかる街へと変貌を遂げたサンフランシスコでこの家を手に入れることはあまりに無謀なことだった。
実話から生まれたノスタルジー溢れる現代の御伽噺のような切なくも愛すべき物語
本作は、幼馴染の主演のジミー・フェイルズと監督のジョー・タルボットが二人で始めた映画プロジェクトである。自作の予告編とクラウドファンディングからスタートし、サンフランシスコ、ベイエリアで暮らす人々の応援もあって、プロジェクトは進み、A24とブラッド・ピット率いる製作プロダクション、プランBの参加で映画化が実現した。
シェルターで暮らすことを余儀なくされたこともあった苦労の多かった成長期を過ごしたジミーが6歳まで暮らした家での温もりのあった思い出を支えにしてきたことが映画の原点となっている。
Must Point:
監督のジョー・タルボットは、今でもカルト的な人気を誇るソーラ・バーチとスカーレット・ヨハンソン主演の人気コミックの映画化作品『ゴーストワールド』(2001年)の大ファンであり、オマージュよろしく『ゴースト~』のラストシーン近くでバスに乗ろうとしているソーラ演じるイーニドのシーンに繋ぐかのようなシーンを用意している。
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バスの中でジミーが出くわす女性二人組の一人をソーラ・バーチが演じ、「サンフランシスコは住みづらくなったのでロサンゼルスへでも行こうか」といったセリフが取り交わされる。
そしてソーラ演じる女性のポケットには、イーニドのトレードマークだった黒縁眼鏡が忍ばせてあるという。
『ゴースト~』の終盤近くでイーニドはあのままバスに乗ってベイエリアへと向かい、テック系の職業に就いて今まで暮らしてきたという勝手に作った裏設定。
ゴーストワールドの舞台はロサンゼルスだったので今更だけどリビングコストが高くなり過ぎたベイエリアは見切って地元へ出戻ろうか?などと云っていることにしようと冗談を撮影中、ソーラと監督ジョーは言い合いながら盛り上がっていたという。
Awards:
- アフリカン・アメリカン映画批評協会:最優秀インディペンデント映画賞
- サンダンス映画祭:監督賞&クリエイティブ・コラボレーション賞・ジョー・タルボット
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー:2019年度トップ10映画選出
- ロサンゼルス批評家協会賞:新世代賞・ジョー・タルボット、ジミー・フェイルズ、ジョナサン・メジャース
『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』2020年10月9日(金)公開、映画前売券(一般券)(ムビチケEメール送付タイプ)
『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(2019年・アメリカ・2時間1分)
監督:
ジョー・タルボット
出演:
ジミー・フェイルズ、ジョナサン・メジャース、ロブ・モーガン、ティチーナ・アーノルド、マイク・エップス、フィン・ウィットロック、ダニー・グローヴァー、ソーラ・バーチ
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