奴隷の身分から逃れるため命を賭けて闘い抜く男のヒューマン・ドラマ『自由への道』
実際に起きた出来事に基づき、南北戦争中の南部の奴隷ピーターの自由を賭けた決死の逃亡を描く。
『トレーニング・デイ』(2001年)の名匠アントワーン・フークア監督、ウィル・スミス主演にて製作され完成していたが、今年3月27日に開催されたアカデミー賞でのウィル・スミスのクリス・ロックへの平手打ち事件が起こったため、ウィルはアカデミー会員を脱退、作品も公開延期となっていた。
しかしAppleオリジナル映画であり作品への前評判も非常に高く、今シーズンの賞レースを睨んで、全米での一部劇場と世界規模での配信のほぼ同時公開となった。オリジナル・スコアを担当したブラジルのジャズ・ピアニスト、マルセロ・ザルボスによる楽曲がすでに評価されており、主演男優賞は望むべくもないが、監督、脚本、俳優、楽曲、衣装、撮影、編集といった様々な賞に絡んでくる可能性は大きい。
Story:
南北戦争中のアメリカ、南部の奴隷であるピーター(ウィル・スミス)は、引き離された愛する家族の元へと帰るため、強制労働をさせられている荘園を抜け出す。
故郷を目指しルイジアナの沼地を必死で逃げるピーターを荘園主ジム・ファッセル(ベン・フォスター)が執拗に追撃してくる。
ピーターの自由への道には多くの試練が待ち受けていた。
Behind The Inside:
撮影はモノクロとカラーの両方で撮影されている珍しい二刀流
まるで黒澤明の『羅生門』や『七人の侍』を想起させるルイジアナの沼地の湿気を感じさせるマディな漆黒の黒と白で撮影された映像は素晴らしく、しかもモノクロームとカラーの両方で撮影されいている。
Under The Film:
2023年以降公開予定から2022年公開に繰り上がったワケ
アントワーン・フークア監督は本作は自らのキャリアのベスト・ムービーであると言っており、また自分が犯した過ちを深く後悔し謝罪しながらも、一緒に熱意を持って参加してくれたスタッフ、キャストたちのためにも作品を公開したいと強く願うウィル・スミス。
だが、本作『自由への道』はウィルの平手打ち事件以降、公開は2023年以降に延期になっていた。
この秋にウィル・スミスとアントワーン・フークアも参加してのパブリック・ヴューイングを行ったワシントンD.C.で開催された第51回米国議会黒人議員連盟の年次立法会議での観客たちの非常にポジティヴな反応を見て、Appleは本作で今年の賞レースに望むことを決意したという。
『自由への道』は多くの黒人議員たちの強い共感に勇気をもらいオスカー・レースまでを駆け上がろうとしている。
来春の大舞台で見せ場を作ってくれるのか?
本作『自由への道』の行く末に今から目が離せない。
『自由への道/Emancipation』(2022年・アメリカ・2時間12分)
監督:
アントワーン・フークア
出演:
ウィル・スミス、ベン・フォスター、チャーメイン・ビンワ 他
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