初長編映画となったサム・ラム、レックス・レンの若き二人の監督による、現代の香港の若者たちが抱いている辛い思いを吐露するかのような青春群像劇。香港では上映禁止となったが、イギリス、ドイツ、カナダ、台湾では公開され、日本国内ではいよいよ正式公開となる。すでに台湾での台北金馬映画祭ではNETPAC賞を受賞するなど、香港の今を象徴する1本となった
Story:
2019年、激しさを増す香港の民主化デモ。
街にはデモに参加する若者たちで溢れていた。
少女YY(ユー・ジーウィン)は、親友のジーユー(レイ・プイイー)とゲームセンターで遊び、デモにも参加する普通の17歳だが、父親は中国で働き、母親は離婚後、再婚相手とイギリスへと移住した。
デモに参加したために逮捕されたYYとジーユー。
「香港は変わらない」とYYに言い残し、ジーユーは香港を去る。
絶望と孤独感から18歳の誕生日にSNSにメッセージを残し、街から忽然と姿を消す。
YYのダイイング・メッセージと感じた少年ナム(スン・クワントー)は、恋人のベル(マヤ・ツァン)、デモの仲間ルイス(トン・カーファイ)、バーニズム(ホー・ワイワー)、ソーシャルワーカーのバウ(スン・ツェン)とドライバー(マック・ウィンサム)のファイ兄弟とYYを捜し出すために捜索隊を結成し、それぞれの思いを胸に香港の街を駆け巡る。
Behind The Inside:
フルーツ・チャン監督に薫陶を受けたレックス・レン監督
フルーツ・チャン監督の香港返還三部作の1作目である映画『メイド・イン・ホンコン』(1997年)は、香港返還直前の香港の若者たちの儚く切ない青春映画。
街でスカウトしたサム・リーを主演にわずか5人のスタッフで撮影を始め、香港を代表する名優アンディ・ラウが倉庫で眠っていた古いフィルムを差し出すなどしてサポートを買って出て、映画を完成させた。
完成した映画は世界を駆け巡り、ロカルノ国際映画祭審査員特別賞、ナント三大陸国際映画祭グランプリ、香港電影金像奨最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀新人賞などに輝き、1997年当時の香港の空気をポップで斬新なタッチで描いた傑作である。
その気骨あるフルーツ・チャン監督に師事し、脚本・助監督として研鑽を積んできたレックス・レン監督は、本作で2019年の香港民主化デモの中、現代香港の若者たちの悲痛に喘ぐ気持ちを描いた。
もしもフルーツ・チャンという監督がいなかったら? 『メイド・イン・ホンコン』が作られなかったとしたら?
本作は存在しなかったのかもしれないし、また違った形の作品となっていたのかもしれない。
未来の香港に一筋の光を差すため・・・
旧世代の映画監督から新世代の映像の旗手へと確かにバトンは渡された。
Awards:
- 台北金馬映画祭:NETPAC賞(最優秀アジア映画)・サム・ラム、レックス・レン
『少年たちの時代革命/May You Stay Forever Young』(2021年・香港・1時間26分)
監督:
サム・ラム、レックス・レン
出演:
ユー・ジーウィン、レイ・プイイー、スン・クワントー、マヤ・ツァン、トン・カーファイ、アイビー・パン、ホー・ワイワー、スン・ツェン、マック・ウィンサム 他
© Animal Farm Production
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