ポストアポカリプス系サバイバルSFホラー『アーケディアン/Arcadian』
ニコラス・ケイジ主演最新作は、現代文明が滅びた後、生き残った人間と夜ごと襲ってくる得体の知れない”何か”との死闘を描いたSFホラー。
監督は、ニコラス・ケイジ主演で汚職警官を描いたクライム・サスペンス『ダーティー・コップ』(2016年)で兄弟監督としてデビューし、本作で再びニコラス・ケイジと組んだ新鋭ベンジャミン・ブリューワー。
Story:
現代文明の終焉から逃げ延びた男、ポール(ニコラス・ケイジ)は、15年後、二人の息子トーマス(マックスウェル・ジェンキンス)とジョセフ(ジェイデン・マーテル)と共に人里離れた農場で暮らしていた。
平穏な日中の生活とは裏腹に夜になると姿を見せない凶暴な”何か”が彼らを襲ってくるのだった・・・。
静かなサバイバル生活に飽き飽きしていたトーマスは近所の農場で暮らすシャルロット(セイディー・ソーヴラル)に夢中になり、日没までの門限を破るようになる。
夜になっても帰らぬトーマス捜索のため危険を犯して外に出るポール。
だが一人農場に残されたジョセはクリーチャーからの激しい夜襲を受けるのだった。
Behind The Inside:
ニコラス・ケイジというつかみどころのない名優
引退宣言とも取れる発言を先ごろしているニコラス・ケイジという俳優の歳を重ねても築きあげ続ける目覚ましいその役者としてのキャリアは、一言で言って、つかみどころがない。
名家コッポラ・ファミリーの血を引く男優であり、ハリウッドのメガヒット映画を牽引してきたトップ・スターという印象とは裏腹に時折、キワモノっぽい印象を持つシネマニアもいるハズである。
作品内容共に素晴らしい演技の作品を残したかと思えば、翌年は失敗作に続いて出演してみたり、年齢を重ねてくるとマネーのために出るハリウッド・スターが多い中、出演への動機はそれだけではないアーティスティックな一面も感じられる。
毎出演作ごとに髪型に拘るというのもニコラス独自のヘンテコリンな遊びのようなものだ。
そもそも役者としてのクリエイター・マインドが他の役者陣とは全く違うレベルのものなのであろうか。
本作での未知のクリーチャーと二人の息子と共に戦う孤独な父、ポール役は、前々作『ドリーム・シナリオ』(2023年)に続いて、総じて評価が高い、撮影前に役作りのため、家族と会うことを3ヶ月間断ち、孤独に過ごしたという。
そして、仕事で出会ってきた人々とのご縁を大切にしているのか、本作の監督は、『ダーティー・コップ』(2016年)の兄弟監督の片割れである若き監督ベンジャミン・ブリューワーが単独でメガホンをとった。
またニコラスを支える周囲のスタッフで特筆すべき人物が、本作では脚本を執筆しているマイケル・ニーロン。
実はマイケルはニコラスのエージェント、マネージャー、そしてニコラス出演映画の共同プロデューサーなのである。
現在までに『トカレフ』(2014年)、『レフト・ビハインド』(2014年)、『ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄』(2015年)、『ダーティー・コップ』(2016)、『パシフィック・ウォー』(2016年)、『ヴェンジェンス』(2017年)、『ドラッグ・チェイサー』(2019年)、『ウィリーズ・ワンダーランド』(2021年)、『マッシブ・タレント』(2022年)、と本作を合わせて10作品のプロデューサーを務めている。
信頼している仲間と仕事をし、新たな才能と組んでまだ自分の可能性を試してみたいというハングリーで揺らぐことのない意志、そして次の世代にも目を配り、肩を貸すといった優しさをニコラス・ケイジという俳優はバランスよく持ち合わせているということなのだろうか。
『アーケディアン/Arcadian』(2024年・カナダ・アメリカ・アイルランド・1時間32分)
監督:
ベンジャミン・ブリューワー
出演:
ニコラス・ケイジ、ジェイデン・マーテル、マックスウェル・ジェンキンス、セイディー・ソーヴラル、他
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