シュールなパラノイア・コメディ『ボーはおそれている』
演技派俳優の極みを疾走するホアキン・フェニックス主演!
現代が生んだ”マスター・オブ・ホラー” アリ・アスター監督最新作は、まるでカフカの世界を地で行くかのような不可解極まりない奇怪な不条理劇。
妄想癖のある男ボー、悪夢のような奇妙な旅路の果てで彼が目にしたものとは・・・。
Story:
犯罪多発エリアで孤独に暮らす心配性のボー・ワッサーマン(ホアキン・フェニックス)は、巨大企業の経営者モナ・ワッサーマン(パティ・ルポーン)の息子。
父は母との性交渉中に他界したため、父親の顔を知らないまま育った。
少年時代、ボー(アーメン・ナハペシャン)は客船クルーズで出会ったエレイン(ジュリア・アントネッリ)と恋に落ち、大人になって、再会を果たすまでは貞操を守ることを誓い合う。
ボーは父の命日に母に会うため空港へと行こうとした矢先、部屋の鍵と荷物を何者かに盗まれたために飛行機に乗り遅れてしまうのだった。
言い訳の連絡をした母モナからも無視されるボー。
しかも彼は横暴なホームレスに部屋を閉め出され、路頭に迷っているところを配送トラックに轢かれてしまう。
だがその頃、実家に暴漢が侵入し、モナは首をはねられてしまう。
その数日後にボーが目覚めるとなぜか、グレース(エイミー・ライアン)とロジャー(ネイサン・レイン)のカップルと情緒不安定なティーンのトニ(カイリー・ロジャーズ)、そして、変人の同居人で退役軍人のジーヴス(ドゥニ・メノーシェ)らが暮らす家にいた。
そんなボーに、モナの弁護士コーエン博士(リチャード・カインド)は、モナが最後に言い残した言葉を伝えてきた。
「ボーが家に辿り着くまでは、私を埋葬しないで」
そこでボーの回復を待って、ロジャーは彼を実家へと送り届けることを約束する。
だが、やっと出発することになったその日、トニが自死のために買ってあったペンキひと缶をボーに無理やり飲ませようとするのだが、あろうことかトニが死んでしまう。
トニの死の責任をグレースに激しく突きつけられたボーは森へと逃げ、ジーヴスが彼の後を追うのだった。
Behind The Inside:
悪夢のような不条理劇の元ネタはアリ・アスターの過去の短編映画
このまるでカフカの不条理世界を地でいくかのような不可解極まりない怪作である本作は、アリ・アスターが2011年に監督した7分間の短編映画『Beau』が元ネタと言われている。
これに2014年にリークした舞台脚本の下書き『Beau Is Arraid』を組み合わせたものが今回の映画化作品となったと言われている。
「4時間の悪夢映画」とアリが述べている通り、本来の総尺は、1時間1分長い4時間はありそうである。
興行のために1分短くして2時間59分としたのもアリの茶目っ気であり、さすがに4時間は長いにしても嫌がらせのようにほぼ3時間、ボーの悪夢を見せつけられる奇怪な大作ということになる。
Under The Film:
エイプリル・フールに密かに作品を差し替え、正式公開1ヶ月前に映画館でフライング上映
アリ・アスターは今年の4月1日エイプリル・フールに、ニューヨークの映画館で上映予定だったディレクターズ・カット版『ミッドサマー』(2019年)を黙って本作『Beau Is Afraid』にこっそり差し替え、公開1ヶ月前のタイミングで一回限りのフライング上映を行い、予期していなかった観客を大いに驚かせた。
『ボーはおそれている/Beau Is Afraid』(2023年・アメリカ・イギリス・フィンランド・2時間59分)
監督:
アリ・アスター
出演:
ホアキン・フェニックス、パティ・ルポーン、エイミー・ライアン、ネイサン・レイン、カイリー・ロジャーズ、ドゥニ・メノーシェ、パーカー・ポージー、ゾーイ・リスター=ジョーンズ、アーメン・ナハペシャン、ジュリア・アントネッリ 他
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