達観したその人生観に学ぶ『STILL マイケル・J・フォックス ストーリー』
若くしてトップスターとなった絶頂期に突然パーキンソン病を発病し、以来32年もの間、病魔と闘い続けているマイケル・J・フォックス。
マイケルが執筆した4冊の本以外ではほとんど語られることのなかった彼の苦難の道のりを、地球温暖化の危機を訴えたドキュメンタリー『不都合な真実』(2006年)の監督デイビス・グッゲンハイムが描き出す。
マイケルを世界的な人気者にしたSFタイム・トラベル映画の傑作シリーズ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』等、過去の出演作をリズミカルに織り交ぜながら真摯に、そして時には笑いを誘いながら病魔がもたらした卓越したその人生観を語り尽くす。
Story:
1982年から1989年まで放映された人気TVドラマ『ファミリー・タイズ』のアレックス役でお茶の間の人気者となり、その後、『バック・トゥ・ザ・フーチャー』シリーズ(1985年〜1990年)3部作でのマーティ・マクフライ役で映画初主演にして世界的な人気スターとなったマイケル・J・フォックス。
だが人気絶頂期の1991年、29歳の時に突然パーキンソン病を発症し、以後は病を隠し俳優活動を続けてきたが、1998年に病気を公表して俳優業から一旦は身を引いた。
マイケルは、不治の病をなんとかして治癒可能にしたいという願いの下に「マイケル・J・フォックス パーキンソン病リサーチ財団」を設立し、パーキンソン病研究の助成活動を開始する。
またベストセラーとなった自叙伝「ラッキーマン」(2003年)を刊行し、以降3冊の著作を出版してきた。
その後、俳優業活動を再開するが、パーキンソン病の病状の進行を止めることは叶わず、2020年に2度目の引退宣言をすることになった。
それでも多くの人々と家族に愛され続けてきたハリウッド・スターは、根っからの楽天家という素質を武器に不治の病に立ち向かい続ける。
Behind The Inside:
マイケル・J・フォックスを紐解く4冊の本
ほんとうに大切なものを、ぼくは病気のおかげで手に入れた。だから、ぼくは自分をラッキーマンだと思うのだ。
マイケル・J・フォックス 「ラッキーマン」より
29歳の若さで不治の病とされるパーキンソン病を発病したマイケル・J・フォックスが自らの人生、仕事、家族、パーキンソン病との闘いを綴った感動の日々を記した初の自叙伝「ラッキーマン」
楽天的で明るいマイケルであるが、自身の弱さを痛感し、愛する妻トレイシー・ポランとセラピストの助けで病気を受け入れ、闘うことを決意し、パーキンソン病研究の助成活動を開始する未来へと踏み出すマイケル。
人生をあらためて見つめ直した男からの魂を揺さぶる言葉の数々。
「ぼくの歩みは一歩前進二歩後退のようなものかもしれない。
マイケル・J・フォックス 「いつも上を向いて」より
だが、パーキンソン病とともに過ごしてきて、大事なことは、
いつも上を向いて、その一歩を数えることだということを、ぼくは学んだ。」
落馬事故により首から下が麻痺となった俳優クリストファー・リーヴ、同じくパーキンソン病を発病していた元ボクサー、モハメド・アリとの心温まる出会いで勇気付けられたことも契機となり、不治の病と言われるパーキンソン病研究の助成活動を行う財団を作ったマイケルだったが、そのためにも政治の世界へと足を踏み入れなければならなかった。
それゆえに心ない中傷にもあってきたマイケル。
どんな時でも笑みを絶やさず、未来への願いを支えにして、優しき父であり、病魔と闘うマイケルの真実の姿を活写する。
いまここで、
マイケル・J・フォックス 「マイケル・J・フォックスの贈る言葉――未来へ踏みだす君に、伝えたいこと」より
正確にいまこの瞬間に、
きみに起こっていることは、
きみだけのものだ。
それを自分のものにしてほしい。
原題タイトルの”A FUNNY THING HAPPENED ON THE WAY TO THE FUTURE”とは、未来への道すがらおかしなことが身に降りかかってきた、といった意味のタイトル。
高校を中退してハリウッドへ進出したマイケルの成功と様々な出会い、結婚、そして温かい家族に恵まれながらも成功の絶頂期に患ったパーキンソン病との格闘の日々を通して、病気になったことで人生の真実を学んだマイケルからこれから人生に立ち向かっていく若者たちのための感動の言葉の数々が散りばめられている。
2021年7月発売の最新の回顧録「No Time Like the Future: An Optimist Considers Mortality」、原題タイトルの意味は、”やるなら今”にかけた”やるなら未来 – 楽観論者ですら死の文字がよぎる”
過去の刊行作よりも深刻なニュアンスを感じさせるタイトルである。
マイケルの俳優活動は緩やかに再開されてきたが、パーキンソン病の進行を止めることは叶わず、この中で病気の影響による記憶力低下からマイケルは2度目の俳優引退を表明した。
いつの日かは治癒可能になるのではとされるパーキンソン病だが、現在61歳のマイケルの存命中に治療法が確立される可能性は不明である。
マイケル・J・フォックスは、ハリウッドきっての教授肌の頭脳派監督であるロバート・ゼメキスによって生み出された80年代の傑作SF映画『バック・トゥ・ザ・フーチャー』で現在と過去と未来を自由に冒険する青年マーティ・マクフライ役で永遠に記憶されることは間違いない。
そして、現在のマイケルは、本当の意味でのヒーローとなった。
Awards:
- サウス・バイ・サウスウエスト映画祭:ホープ賞・デイビス・グッゲンハイム
『STILL マイケル・J・フォックス ストーリー/Still』(2023年・アメリカ・1時間35分)
監督:
デイビス・グッゲンハイム
出演:
マイケル・J・フォックス、トレイシー・ポラン、アンドリュー・バーバー、デイヴィッド・ダイヤモンド、サム・フォックス、ハンナ・ゴールウェイ、ダニー・イリザリー、アリソン・クラウゼ、シボーン・マーフィー、ブラッドレイ・ピーターズ 他
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