命がいくつあっても足りない超弩級のピュアなアクション・エンタメ『フォールガイ』

80年代の人気TVドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』を下敷きに『ブレット・トレイン』を大ヒットに導いたデヴィッド・リーチがメガホンをとって一級のアクション・エンタメ作品に仕上げた本作。

映画のスタントマン役にライアン・ゴズリング、映画監督役にエミリー・ブラントを据え、ツイてないスタントマン、コルト・シーバースが失踪したスターを捜索する内に犯罪組織から追われ怒涛のスタント・アクションを繰り広げ、危機をくぐり抜ける様は、さながら『ブレット・トレイン』でブラッド・ピットが演じたレディバグのよう。

Story:

アクション映画のスタントマン、コルト・シーバース（ライアン・ゴズリング）は、負傷した体を癒し、心の健康を取り戻すため、一年間、休養していたが復帰する時が来た。

だが、別れた恋人ジョディ（エミリー・ブラント）が監督する最新作の主演スター、トム・ライダー（アーロン・テイラー＝ジョンソン）が突如、謎の失踪を遂げたことから、ゲイル（ハンナ・ワディンガム）は、トムのスタント・ダブルを演じてきたコルトはトムがいなければ仕事を失うし、元カノ、ジョディの新作もボツになるとトム捜索をコルトに迫る。

渋々、引き受けたコルトだったが、彼を待ち受けていたのは、タチの悪い犯罪組織だった・・・。

トムを連れ戻すどころか、完全にターゲットとしてマークされてしまったコルトは、悪党どもを相手にアクション映画顔負けの超絶スタントの数々で危機を乗り越えてゆく。

Behind The Inside:

錚々たるスターたちを押し退け主演となったライアン・ゴズリング

かつて日本でも人気のあったTVドラマ『600万ドルの男』（1974年−1978年）で人気を轟かせた俳優リー・メジャースが次に主演し人気を博した痛快アクション・ドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』（1981年ー1986年）。

映画のアクション・シーンのスタントマン、コルト・シーバース（リー・メジャース）は本業のスタントの仕事が薄くなるとダブル・ワークとして保釈後に逃亡した人間を捕まえて連れ戻す危険なバウンティ・ハンターとなり賞金を稼いでしのいでいた。

全5シーズンのうち、日本でもシーズン1から2までTV放送されたこの伝説的なアクション・ドラマは、2010年頃から何度も映画化が試みられた。

しかも映画企画の主演に据えられたスターは、トム・クルーズに始まり、キアヌ・リーブス、ニコラス・ケイジ、ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサムとトップ・リストのスターばかり、しかもこの役を彼らは皆、やる気満々だったという。

それほどまでに人気のあったTVドラマであり、映画産業にいる者であれば出てみたいと思わせる魅力的な物語なのだ。

当初、監督のデヴィッド・リーチは、ウィル・スミス主演の『ファスト・アンド・スムース/Fast and Smooth』のメガホンを取るつもりであったが、ウィルのクリス・ロック平手打ち事件が起きる1週間前に監督権を手放し、『フォールガイ』を監督する道を選んだ。

『ファスト・アンド・スムース』の映画化は依然ストップしたままである。

『ブレット・トレイン』（2022年）や『ワイルド・スピード　スーパーコンボ』（2019年）でもコミカルさの中に奇想天外で切れ味のよいアクション・シーンの連打を演出してきた元スタントマンの監督デヴィッド・リーチによる眼が覚めるようなガチのスタントシーンにより想像以上の仕上がりを見せた本作『フォールガイ』がヒットすれば、当然、2作目が作られることは必至である。

『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』の登場人物であり主人公のスタントマン、コルト・シーバースは、映画版ではライアン・ゴズリングが演じ、ドラマでは相棒であり、アシスタントであった女性ジョディ・バンクスを映画監督のジョディとしてエミリー・ブラントが演じている。

うっすらと元ネタとなったTVドラマをなぞって設定やストーリーはかなり変更しているのが映画版であるが、TV版に登場していたコルトを助けるもう一人のアシスタント、甥っ子のホーイ・マンソンが新キャラとして登場するとしたら、2作目となるのかもしれない。

ちなみに本作では、『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』の主演であり、御年84歳となる現役スター、リー・メジャースがカメオ出演をし、当時の愛車、1981製ジェネラルモータースのK-2500 ワイルドサイドというアメリカン・トラック好きにはたまらないレトロな名車までもが登場する。

Under The Film:

スピルバーグに褒められライアン感激！

いち早く『フォールガイ』を観たスティーブン・スピルバーグは、今年の映画賞シーズンの最中に会場でスタスタとライアン・ゴズリングめがけて近づき、大好きな映画だと感想を伝えたという。

スピルバーグとは話したこともなかったライアンは、巨匠が声をかけてくれたことにとても驚き、そして、往年のTVドラマ・シリーズ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』が映画化されたって、何かが変わる大きな出来事ではないと思っていたこともあって、とても嬉しく本作が格別な作品となったという。

いかにTVドラマ・シリーズ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』が当時、人気があり、今も映画人から愛されているのかを知らしめるエピソードであるし、またスタントマン出身の監督デヴィッド・リーチのアクション映画演出のセンスは間違いないものなのだと信じさせてくれる。

スタントマンという映画産業を支える重要な裏方の職業にスポットを当て、本作がヒットすれば彼らへの理解や地位向上にも繋がる。

巨匠スピルバーグにも褒められ、ライアンも鼻高々に違いない。

『フォールガイ/The Fall Guy』（2024年・アメリカ・2時間6分）
監督：
デヴィッド・リーチ
出演：
ライアン・ゴズリング、エミリー・ブラント、ハンナ・ワディンガム、アーロン・テイラー＝ジョンソン、テリーサ・パーマー、ステファニー・スー、ウィンストン・デューク、マドリン・ジョーンズ 他
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