20年前、上映禁止にもなった超問題作の再編集版!『アレックス STRAIGHT CUT』
レイプ被害に遭う女性アレックスの悲劇をエンディングから始まり、ストーリーの冒頭へと話が遡ってゆくという奇異な構成とした鬼才ギャスパー・ノエ監督。この色褪せることのない衝撃的な映画『アレックス』が時計回りのストーリー展開に編集されたSTRAIGHT CUT版として遂に上映される!
Story:
恋人のマルキュス(ヴァンサン・カッセル)と暮らし愛に満ちた幸せな日々を送るアレックス(モニカ・ベルッチ)。
ある日、共通の友人でありアレックスの元恋人のピエール(アルベール・デュポンテル)と共にパーティーに呼ばれた。
急な故障で車を出せなくなったピエールは不機嫌で、未だ未練があるアレックスに対しての愚痴が止まらない。
そんな彼を受け流しながら地下鉄で会場に向う三人。
しかし、パーティーでハメを外すマルキュスと些細なことで口論になったアレックスは、心配するピエールを振り切り途中で帰ってしまう。
一人で夜道を歩くアレックスはショートカットのために普段は使わない地下道で突然、通りすがりの男 (ジョー・プレスティア)に襲われ、激しく暴行を受け凌辱されてしまうのだった。
変わり果てたアレックスの姿を見たマルキュスは、自責の念に駆られ絶望し、怒りに任せて犯人を探し出そうと夜の街を彷徨い、ピエールは落ち着かせようと同行するのだが・・・。
Behind The Inside:
20年前のカンヌ映画祭上映時での途中退場者続出の原因は“音”にあった
2002年のカンヌ映画祭での正式上映時、200人が退場し3人が場内で気絶したと云われている本作は、その年のニューズウィーク誌が、”本年度の退場映画No.1”と揶揄していた。
冒頭30分間、28Hzという人が気づかないほど低音のノイズが鳴っており、このサウンド・エフェクトによって、観客はめまいや吐き気などの不快な症状を感じたため、退場者が続出したのではないか?と云われている。この音を足したのもギャスパーの演出上の狙いだったとも云われている。
アレックスを体当たりで演じたモニカ・ベルッチが二日間かけて熱演したレイプ・シーンは、本人は一度も観たことがないという。それほどにおぞましい体験だったのだろう。
Must Point:
ノーランの『メメント』にインスパイアされたギャスパー
ストーリーが逆再生されてゆくという手法で思い出すのは、クリストファー・ノーラン監督の十八番だが、ギャスパーはノーランの初期の傑作『メメント』(2000年)を観て、感化され、本作『アレックス』を撮ったと云われている。
だが、台本は3ページの走り書きのみであとは即興演出で撮り上げた。
しかも、ギャスパー・ノエは自ら撮影も行うため、16ミリ・フィルム・カメラを回しながら即興で演出していった。
今回の『アレックス STRAIGHT CUT』上映に併せ、新宿武蔵野館ではオリジナル版も上映されるとのこと。
是非、この機会に2本見比べてみることをおすすめする。
”時はすべてを破壊する”
20年前に投げかけられたこの言葉が持つ様々な意味合いを20年後の今、体感してみたい。
『アレックス STRAIGHT CUT』(2020年・フランス・1時間30分)
監督:
ギャスパー・ノエ
出演:
モニカ・ベルッチ、ヴァンサン・カッセル、アルベール・デュポンテル、ジョー・プレスティア、フィリップ・ナオン 他
© 2020 / STUDIOCANAL – Les Cinemas de la Zone – 120 Films. All rights reserved.
2021年10月29日 新宿武蔵野館 他 全国順次公開‼
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