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10代の少女のリアルな葛藤を描く『ユニ』カミラ・アンディニ監督とのQ&A全文掲載

アカデミー賞・国際長編映画賞インドネシア代表に選出されている第22回東京フィルメックス・コンペティション部門上映作品。

ティーンエイジのセックス、早すぎる見合い結婚といったテーマを自然体で描いてゆくインドネシア映画『ユニ』

上映後、カミラ・アンディニ監督が登壇してのQ&A全文掲載。


Story:

ユニは高校の最終学年に通う10代の少女。

彼女は自分自身に多くの可能性を見出しているが、自分の人生で何をしたいのかを今なお考えているところであり、そのために大学で勉強を続けたいと思っている。

しかし、彼女に結婚の申し出が届くと、彼女のそれまでの生活は一変してしまう。


本作は、2022年に開催の第94回アカデミー賞・国際長編映画賞・インドネシア代表作品に選出されている。


『ユニ』より

『ユニ』Q&A

画面左:神谷プログラム・ディレクター/画面右: カミラ・アンディニ 監督

神谷プログラム・ディレクター(以降、神谷PD):
東京国際映画祭の方でカミラ・アンディニ監督を招聘してくださったので、こちらの方のQ&Aにも登壇していただけることになりました。

では、早速、 カミラ・アンディニ監督をお招きしましょう。

(観客一同拍手)

最初に監督から一言ご挨拶をいただければと思います。

カミラ・アンディニ監督(以降、アンディ二監督):
皆さん、今日は映画をご覧になっていただきありがとうございます。
長編2作目の時にこちらの会場で上映した時のことをよく覚えています。
またこのステージに戻ってこれたことを光栄に思います。

神谷PD :
ありがとうございます。では、早速、質問に移りたいと思います。
この作品はインドネシアの10代の葛藤を描いたものだと思います。
最初にあったアイデアやこの作品を作ることになった経緯などお知らせください。

アンディ二監督 :
この作品は2017年の作品『見えるもの、見えざるもの』を撮り終えた後に構想が浮かびました。

ある日、家の家政婦が村に帰りたいと言うのです。
というのも17歳の娘がいて、妊娠をしていて、ちょっと状態がよくないでのかなり心配をしていたのです。
何故、そんなに若くして結婚をしたのですか?と訊いたところ、婚姻の申し入れがいくつか続いて、そうして
結婚が決まったのだそうです。
確かに私が10代の時も年若くして結婚するという人が周りにいました。

その一件以来、ずっと私の脳裏にこびりついていたのです。

私の夫はこの映画のプロデューサーでもあるのですが、次のプロジェクトとして、この家の家政婦さんの娘さんの話をベースにして、私の視点を加えた作品として、映画を作ると夫に伝えました。

まず家の家政婦さんの娘さんの実際の結婚式の日が酷く雨が降っていたという話が記憶に残っていて、そのヴィジュアル・イメージから話の構想を組み立てて行きました。

神谷PD :
ありがとうございます。主演の方についての質問がいくつか届いております。
非常に繊細なキャラクターでしたが、キャスティングについて教えてください。

アンディ二監督 :
主演を演じたアラウィンダ・キラナにとって、初めての長編映画への出演でした。
というか、彼女は演技経験がなかったのです。

この主人公ユニの役は、かなり物議を醸す役柄だけにロケ地となったセナンでこのユニ役を探すのはかなり困難であろうことが想像されました。

そこでジャカルタでキャスティングをしようということになり、まず、難役なだけにすでに多くのファンを持つスター俳優は避けたいと考えました。

最終的に私のアシスタントがインスタグラムでアラウィンダを見つけてきました。

彼女と会って話してみたところ、とても勇気があって、私のヴィジョンも理解してくれました。そして、
このテーマに関しても自分の意見があるとても知的な女性でした。

当時、彼女の年齢は18歳でしたがこういった挑戦を厭わず、他の同年代の女性とはかなり違う印象でした。

私と一緒にこの作品を作ってくれる人ですでに固定されたイメージのない演者ということで彼女に決めました。

会った瞬間にユニ役は彼女だなとは直感していました。

他の人もオーディションしようとは思ったのですが、ユニ役はアラウィダに決定してしまいました。

ただ彼女は全く違う境遇でしたので、ワークショップに参加するなどして、役の中に入っていってもらいました。

神谷PD :
はい、ありがとうございます。それでは次の質問に参ります。
サパルディ・ジョコ・ダモノの詩を使った理由を教えてください。

アンディ二監督 :
この脚本を書いていて、詩を組み込んだ作品にしたいと考えていました。
それで「6月の雨」という詩がすぐに頭に浮かびました。

というのも先ほどの結婚式の時の雨のモチーフがあったからなんです。

それと主役のユニ、この名前は6月生まれの子によく付ける名だということにも繋がります。

サパルディ・ジョコ・ダモノの詩は、本作中に他にも出てくるのですが、 ユニが現実逃避をする空間、それが詩なのです。

私にとっても初めて詩というものを理解したのもサパルディ・ジョコ・ダモノという詩人の詩を読んだ時だったのです。

実は私の父、映画監督のガリン・ヌグロホは、1991年に作った映画『一切れのパンの愛』でもサパルディの詩を使って、ミュージカルのように音楽に乗せています。この曲は『ユニ』のエンディングでも使っています。

父が『一切れのパンの愛』を監督した時、私はまだ5歳でしたが、家の中や車で移動中によくこの曲を聴いていたので、ずっと覚えている曲でもありました。

神谷PD :
はい、ありがとうございます。 映画の中で度々使われた紫という色についての質問がいくつか届いております。
何故、紫色だったのでしょうか?

アンディ二監督 :
これは、モデルになっている友人がいるのです。
親しい友達なのですが、彼女は子供の頃から紫が大好きで、紫色には目がなくて、学校でも紫色の物を見ると盗んでしまう盗み癖があったのです。

ですので、紫色のものが無くなったとなると彼女に違いないということで校長室に呼ばれる常連の人だったんです。

私が紫のものを身に付けたりしようものなら彼女に嫌われてしまう、そんなちょっと紫に憑りつかれたような友人だったのです。

ということで、紫色に目がないユニの性格は、実在のモデルの悪癖から頂きました。

インドネシアの子供たちは、私の色みたいなものを持っているのです。

そんな実際の子供たちの特徴もあり、ユニに当てはめてみたのです。

神谷PD :
ありがとうございます。ではここで舞台袖に届いている質問を読んでいただけますか?

舞台袖スタッフ:
はい、質問を読ませていただきます。
本作、とてもセンシティブなテーマも絡んでいたと思いますが、脚本執筆時や演出時に何か心がけたことはありますか?

アンディ二監督 :
この作品は、インドネシアで作るにはかなり困難を伴うのではないかという予想はつきました。

公開が出来るのかも分からない、けれども私がプロデューサーに伝えたことは、とにかく正直な話が作りたい。
私の好きなように撮らせて欲しいということをプロデューサーに約束してもらったのです。

それでも一緒に組むパートナーを慎重に選ぶ必要がありました。
やはり勇気を持って発信するための仲間を落ち着いて選ばなければなりませんでした。

最終的には色々な困難がありましたけれど、この作品のことを信じて一緒に組んでくれた方々もとにかくインドネシアの若い女性に届くようにと協力してくれました。

10代の若い女性が主人公の映画というものはインドネシアには結構ありますが、都市部に限られていて、ユニのようなタイプの多くの少女は村のような環境で暮らしていることが多いのです。

ですので、そういった少女たちの声を代弁したいという思いもありました。

この映画の公開も12月に決まり、検閲も無事パスしたので、今の気分は解放感でいっぱいです。

神谷PD :
それはよかったです。
時間もかなり限られてきてしまいましたので、これが最後の質問になってしまうかもしれません。
前作『見えるもの、見えざるもの』を観た方からの質問なのですが、本作は前作と比べて、作品的にまた映像的にどのような関係性を持っているとお考えですか?

アンディ二監督 :
どんなストーリーにも必要性があると思います。私にとって、映画作品は子供のようなものです。

生まれてきて、どう育つのか?どんなキャラクターを持っているのかは分からないですよね。

どんな人に育っていくのか?どう生きてゆくのか?ということをある意味、見届けるような心持ちでいます。

映画の作り方のプロセスは、前作も本作も同じです。

自分の中を深く見つめる、そして、キャラクターを深く読み込んで、何が響くのか、何が語り掛けるのか?同じプロセスを経ても結果は異なったものとなります。

神谷PD :
ありがとうございます。前作が幻想譚のような感じで、本作はとてもナチュラルな感じでしたが、撮影で何か変わったことはあったのでしょうか?

アンディ二監督 :
ストーリーによって、ニーズが異なってきますので、前作では、会話よりも動きで表現しました。闇と光の関係性、そして、ゆっくりとしたリズムが必要だったのです。それは時、動き、呼吸、そういったことを扱う映画だったからなのです。

それに相対して、『ユニ』は、社会を描いています。ですので、よりキャラクター重視、ユニたちがどんなところで暮らしているのか?そういったところがこの映画のニーズなのです。

とにかくこれはとても現実的な作品なのだということを感じて欲しい。伝えたい仮題、語るべきテーマがあるということ、

そして、ユニたちは日々、どんなことをしているのか?ということをリアルにこうした子たちは周りにもいるのだということを伝えるためにこうしたスタイルを選びました。

神谷PD :
どうもありがとうございます。時間が来てしまいましたので、これでQ&Aを終了したいとい思います。
最後に監督から何か一言、いただけたらと思います。

監督:カミラ・アンディニ

アンディ二監督 :
まだ質問がいっぱい届いていて、その質問に答える時間がないことを申し訳なく思います。

実際にここに足を運んでくださった皆さん、まだパンデミックの最中で、こちらに来ることは容易ではないということを理解しております。

今日は、本当にありがとうございました。


YUNI Trailer | TIFF 2021

Uploaded by TIFF Trailers on 2021-08-11.

『ユニ/Yuni(原題)』 オリジナル予告編

Awards:

  • フェスティバル・フィルム・インドネシア:ベスト・アクトレス賞・アラウィンダ・キラナ
  • トロント国際映画祭:プラットフォーム賞・カミラ・アンディ二

『ユニ/Yuni(原題)』 (2021年・インドネシア、シンガポール、フランス、オーストラリア・1時間35分)
監督:
カミラ・アンディニ
出演:
アラウィンダ・キラナ、アルディロバ・ディマス・アディティア、マリサ・アニタ、アスマラ・アビガイル、ムハマド・カン、ナズラ・トイブ、ネニン・リスマ、ヴァニア・アウレル、ボア・サルティカ、アンネ・ヤスミン、トト st. ラディック


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