『死ぬ間際』(2020年)で東京フィルメックス最優秀作品賞、『クレーン・ランタン』(2021年)で東京国際映画祭芸術貢献賞を受賞したヒラル・バイダロフ監督最新作。
アゼルバイジャンの森を舞台に戦争がもたらす悲劇と、人間の愚かな行いとは無縁であるかのような自然の美しさが驚異的な映像美と詩で多次元的に描かれる。
Story:
黄金色に輝く丘を歩く猟師(フセイン・ナシロフ)、深い緑の木々の中たわわに実る林檎。
水たまりでもがいている小魚を川に放してやる女性、スーラ(ラナ・アスガロワ)。
スーラは小さな命を大切にしながらも自らの命の危機に怯えている。
彼女には愛する婚約者がおり、彼の子どもを身ごもっていて結婚式を控えた幸せな女性のはずが、迫り来る戦争のため、明日をも知れぬ恐怖に怯えているのだった。
スーラの恋人であるダヴド(オルカン・イスカンダルリ)は懸命に彼女を慰めるが、彼女の怯えは収まることはなかった。
虫や魚、実る果実、萌ゆる緑から濃さを増す木々の葉、飛び立つ鳥たち、命に満ち溢れた世界は美しく、静かで気高い。
だが、自然の営みを踏みにじるかのような戦争は恋人たちを狂わせ、悲劇へと向かってゆくのだった。
Behind The Inside:
「説教」3部作のうちの1本として作られた映画
本作は現時点では日本未公開の『魚への説教/Sermon to the Fish』(2022年・1時間29分)と共に3部作のうちの1本として制作された。
そして3部作の最後、3本目の作品は今まさに撮影を始めて10日目ほどであり、バイダロフ監督はその途中で東京国際映画祭に出席するために来日したという。
トリロジー1作目となる『魚への説教/Sermon to the Fish』はロカルノ国際映画祭・緑の豹賞(スペシャル・メンション受賞)を受賞している。
Story:
ある兵士が戦地から帰還すると故郷の村人たちは謎の病のために身体が腐り、死に絶え全滅していた。
だがたった一人、彼の妹だけが生き残っていたが、彼女の身体もまたゆっくりと腐っていっていたのだった。
そして、傍には彼女を見守るようにして一匹の犬が寄り添っていた。
Awards:
- 第36回東京国際映画祭:コンぺティション部門正式出品作
『鳥たちへの説教/Sermon to the Birds』(2023年・アゼルバイジャン・1時間43分)
監督:
ヒラル・バイダロフ
出演:
オルカン・イスカンダルリ、ラナ・アスガロワ、 フセイン・ナシロフ
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