ホン・サンス映画の顔である女優キム・ミニと前作『あなたの顔の前に』(2021年)のイ・ヘヨンが女優と短編映画を撮ろうとする小説家として共演する。
邁進してきた道で成功を収めつつも心に悩みを抱えて生きてきた二人の女性の出会いを軸に、友人たちとのふれあいと、人生の新たなページが捲られる時に感じる清々しい心のざわめきのひとときを描く。
Story:
小説家のジュニ(イ・ヘヨン)は、長らく連絡が途絶えていた後輩が経営している本屋を訪れた。
そこでジュニは映画監督とその妻に偶然出くわした後、第一線を退いたという人気女優のギルス(キム・ミニ)と出会う。
ギルスに興味を持ったジュニは、彼女を主演に映画を撮りたいと申し入れる。
再び本屋を訪ねた二人を待っていたのは友人たちとの酒席であった。
思いがけない映画作りの提案にざわついた心持ちの二人であったが、ギルスは思いのほか酔ってしまい、酔い潰れてしまうのだった。
Behind The Inside:
多作の人、ホン・サンス監督
非常にミニマルなストーリー設定と映像スタイルで脚本、撮影、編集までを一人でこなす韓国を代表する唯一無二のスタイルを持つ映画監督ホン・サンス。
マーティン・スコセッシ監督は、ホン・サンス作品を評して「はじめは何のことだか判然としないが、徐々にオレンジの皮が捲れてゆくように話が展開してゆく」と述べている。
見知った俳優陣、いつものメンツで、特に大きなドラマのない監督にとって身近な世界を小さな宇宙としつつ、自らビデオカメラを回し時に過激なズームワークをアクセントに織り交ぜながら、コメディ・ドラマなのか、ドキュメンタリーなのか、即興劇なのか、まるで映画というものを拒否するかのようにシンプルに活写する。
たわいもないセリフとセリフの間に人生の大事な機微が垣間見えてくる。
ホン・サンス映画は製作され続け、今年もベルリンで上映され、そしてカンヌでの最新作の上映が待たれる。
作り続ければ作り続けるほど、ホン・サンスの宇宙は確立されてゆくし、拡張し続けるモダンな映画というものとは、遠い未来から振り返れば、”クラシック”とも呼べるような全く相容れない魂のようなものだけが醸成され続けるので、観ることを止めることなど到底できないのだ。
Awards:
『小説家の映画/The Novelist’s Film』(2022年・韓国・1時間32分)
監督:
ホン・サンス
出演:
イ・ヘヨン、キム・ミニ、パク・ミソ、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ、キ・ジュボン、チョ・ユニ、ハ・ソングク、イ・ユンミ、キム・シハ 他
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