映画『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)の原作者であり、奇怪な児童文学を手掛けてきた作家ロアルド・ダールの短編小説「奇才ヘンリー・シュガーの物語」をウェス・アンダーソン監督が短編作品として実写映像化。
ショート・ムービーとはいえ、招聘されたヴェネチア国際映画祭ではアウト・オブ・コンペ作品として上映され、正式上映後は4分間のスタンディング・オベーションで熱狂的に讃えられた。
Story:
ヘンリー・シュガー(ベネディクト・カンバーバッチ)は、父親が遺した遺産で働きもせずギャンブルにハマっている優雅な男。
ある日、友人宅で見つけた奇妙なノートの1ページ目に記された「イムラット・カーン 目を使わずして見る男」の不可思議な魅力に触発されたヘンリーは、自分も特殊能力を身につけて、イカサマで賭け事に勝とうと試みるのだが・・・。
Behind The Inside:
ロアルド・ダール✖️ウェス・アンダーソンは、奇妙な蜜の味
実はウェスにとって、ダールの原作を映画化するのは『ファンタスティック Mr.FOX』(2009年)に続いて2作目となる。
”奇妙な味”と称される奇怪な文学を執筆し、巨匠ティム・バートンのみならず、一癖ある映画製作者、そして世界中の愛読者を魅了してきた作家ロアルド・ダールにウェスも並々ならぬ深いシンパシーを寄せている。ちなみに本作にはダール本人(レイフ・ファインズ)が登場する。
ウェスがダールの作品を描くのはこれで最後ではあるまい。
いつの日か、二十歳以上の年齢差でゲーリー・クーパーを口説いた女として名を馳せたダールの元妻であり、オスカー女優でもあるパトリシア・ニールとの結婚生活の悲喜交々を、華やかなハリウッドを背景に描く映画をウェスが創る日が来たとしたら、さぞかし魅惑的な作品となるであろう・・・ などと妄想する。
本作は短編とはいえ豪華なキャストで描かれるダールの奇妙な魅力に満ちた物語。
だが、本作でもウェス組常連俳優のビル・マーレイは、長編映画最新作『アステロイド・シティ』に続き2作品連続でまたもや不在という悲劇は続いている。
『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語/The Wonderful Story of Henry Sugar』(2023年・イギリス・アメリカ・37分)
監督:
ウェス・アンダーソン
出演:
ベネディクト・カンバーバッチ、レイフ・ファインズ、ルパート・フレンド、ベン・キングズレー、リチャード・アイオアディ、デーヴ・パテール 他
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