『わたしはロランス』その時、「愛」は変わらずにいられるだろうか。
ストーリー
1980年代、カナダ・モントリオール。
ハイスクールで国語教師をしているロランスは、赤い髪の情熱的なフレッドという恋人とお互いを刺激し合う激しい恋をしていた。
傍目には順調な交際をしている彼らだったが、ロランスは自身の30歳の誕生日にフレッドに重大な告白をする。
それは、「自分は女になりたい。この男の体は間違って生まれてきたものだ」ということだった…。
男性としてのロランスを愛していたフレッドは自分の愛したロランスを否定されたように感じ反発するが、ロランスの真摯な気持ちに心動かされ、彼が“女”になる手助けをし、そばにいることを決意する。
愛を問う
もし私がロランスだったら、もし私がフレッドだったら、どうしただろう?
彼は女になりたい。でも彼女を愛している。
彼女は彼を愛している。でも彼は女になりたい。
愛に性別は関係ないだろうか。
愛に見た目は関係ないだろうか。
関係ないという人もいるだろう。
関係ないと言えれば良いし、そうありたいとも思う。
けれど、現実は違う。
誰かに興味を持った時、恋愛感情を抱いた時、そのきっかけに性別や見た目というファクターは少なからず入っている。
それが変わってしまっても、愛は変わらずにいられるだろうか。
ロランスとフレッドは周囲ともお互いともぶつかり合い、様々な困難に立ち向かい、悩み、怒り、悲しみ、嘆き、迷いながら進み、変わってゆく。
激しくも気持ちを包み隠さずぶつけ合うふたりの姿には胸の奥を抉られるような切なさがある。
本作の見どころはなんといっても斬新かつ古典をダイナミックに変換したともいえるドラン監督一流のセンス溢れる映像表現と緩急のリズム、クラシックとポップ・ミュージックの絶妙な配置で168分という長さを感じさせない仕上がり。
そしてさらに演技派俳優らの競演。
傷つきながらも本当の自分になること、愛することを諦めず前に進み続ける主人公ロランスを真摯かつ情熱的に演じた名優メルヴィル・プポー。
観ている者を惹きつけ離さない激しさでロランスの恋人フレッドを熱演しカンヌ国際映画祭・ある視点部門女優賞を受賞したスザンヌ・クレマン。
母親ジュリエンヌのロランスへの愛を淡々としていながらも静かな強さで表現したフランスの名女優ナタリー・バイ。
「性別」に対する考え方も「愛」に対する考え方も多様化している今、それらに対する問いかけとその答えのひとつを世界に投げかけた意欲作。
若き天才と称されるドラン監督自ら脚本も担当した本作に託した「愛」への問いかけをぜひご覧ください。
『わたしはロランス』予告編
Awards:
- 仏・カンヌ国際映画祭・ある視点部門女優賞
- 仏・カンヌ国際映画祭・クィア・パルム賞
- カナダ・トロント国際映画祭・カナディアン作品賞
わたしはロランス(字幕版)
『わたしはロランス』(2012年・カナダ・フランス・2時間48分)
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ
© 2012-PRODUCTION LAURENCE INC.(une filiale de Lyla Films Inc.)/MK2 s.a./ ARTE FRANCE CINEMA
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